葬儀・終活コラム
形見分け は、いつどのように行う?
故人の愛用品や衣類を近しい人に分け与える 形見分け は、日本に古くからある風習です。「親が亡くなったけれど、誰に形見をあげるかは、自分で決めていいの?」「 形見分け と相続はどう違うの?」などの疑問を持つ人のために、形見分けのルールやマナーをお伝えします。
【もくじ】
故人の愛用品や衣類を近しい人に分け与える 形見分け は、日本に古くからある風習です。「親が亡くなったけれど、誰に形見をあげるかは、自分で決めていいの?」「 形見分け と相続はどう違うの?」などの疑問を持つ人のために、形見分けのルールやマナーをお伝えします。
形見分けとは故人の持ち物を近親者がもらうこと
形見分けとは、故人にゆかりのある衣類や持ち物を、故人の子や孫、あるいは親友に分け与える行為です。過去には主に衣類が形見分けの対象とされ、「スソワケ」、「ソデワケ」等とも呼ばれました。
生前に「私の形見として持っていて」などと手渡されるケースもありますが、この記事では、死後に行われる形見分けについて解説します。
形見分け を行うタイミングは、四十九日法要が終わり、相続関係が明らかになった後
形見分けを行うタイミングは、風習として「忌明け後」とされています。忌明けとは、遺族が故人のために喪に服す「忌服」の期間が終了することを指し、仏教の多くの宗派では、亡くなってから四十九日後を忌明けとしています。
このことから、厳密には故人の死から四十九日間は形見分けをしないことになります。しかし、親族みんなが揃って形見分けのための品を選ぶ機会はそう多くありません。実際には、四十九日法要で親族が集まったときに形見分けをするのが一般的です。
なお、形見分けのときまでには、遺産の全体価額を把握し、相続人全員が遺産の分割について確認、承諾しておく必要があります。形見分けの場で誰かが「これが欲しい」と手を挙げたものが、実はとても高価なものだったことが後にわかると、相続トラブルの種になることがあるためです。
さらに、大規模な遺品整理を行う前に形見分けをするのが望ましいといえます。故人の子どもの一人が「価値のないもの」と判断して処分した故人の品が、実は他の子どもにとってはかけがえのない思い出の品である可能性も否めないためです。「お母さんの財布、捨てちゃったの?」などと兄弟げんかになるのを避けるため、なるべく手付かずの状態をキープしておきましょう。
形見分けの品として適しているもの
形見分けの品として適しているものは、例えば以下のようなものです。相続トラブルに発展させないことが大事なので、なるべく換金性の低いものがふさわしいといえるでしょう。「一般的には価値が低いが、故人に愛着のある人にとっては大事なもの」を対象とします。
・衣類
故人がよく身につけていた、あるいは特別なときに着るものとして大事にしていた着物や帯は、形見分けの定番品です。父親のジャケットを自分サイズに仕立て直すご子息もいます。
・身の周りの小物
腕時計、ステッキ、鞄、帽子、ハンカチなど。少し古びたものであっても、故人の面影を偲ばせるような愛用品が形見分けの品としてふさわしいでしょう。アクセサリーなどの宝飾品は、とくに換金性が低いものを。高価なものを選ぶ場合は、相続人全員に承諾を取りましょう。
・職業で使っていた道具
美容師であった故人が使っていた髪を切る鋏、内職で長年愛用していたミシン、事業をやっていた故人の電卓、料理人の包丁など、故人の仕事を象徴するような道具も形見分けの品に適しています。親族ばかりでなく、長く一緒に仕事をしてきた仲間などへ譲り渡すのもいいでしょう。
・趣味の品
ゴルフクラブやキャンプ用品、碁盤など、個人が趣味で使っていたものも形見分けの対象になります。親族ばかりではなく、一緒に趣味を楽しんできた友人などへ贈るのもいいでしょう。
気をつけたい形見分けのマナー
形見分けとして遺族から贈られたものは、特別な事情がない限り辞退しないのが受け手側のマナーとされています。だからこそ、「これが欲しい」と意思を示せる親族以外に譲るときは、相手にとって迷惑にならないかどうかをよく考えましょう。
形見分けとして贈られたものは、おいそれと処分できません。贈る側にとっては、相手に「本当に欲しい」と思ってもらうものを譲るのがマナーです。そのためには、贈られる本人の希望を事前に確認することが欠かせません。
形見分け が終わった後は、遺品整理を進めよう
形見分けが無事に済んだ後は、遺品整理を進めましょう。形見分けとしては選ばれず、また遺産にも含まれないようなものは、遺族の気持ちの整理がつき次第、処分していきます。
遺品整理は、もう会うことのできない故人を想い出す辛い作業です。しかし、整理しないまま長期間が過ぎると、子世代が高齢化して整理する体力や気力が失われてしまったり、次の相続が生じてしまったりなどして、また後の世代に負担がかかります。他の兄弟や家族と思い出を語り合いながら、遺品整理を行っていきましょう。
参考:『民俗小辞典 死と葬送』吉川弘文館