葬儀・終活コラム

葬儀の準備

樒 (しきみ)とは?葬儀の場で特別に使われる意味について

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樒 は「しきみ」と読み、仏式葬儀の場で多く使われる植物です。地域によっては「しきび」などとも呼ばれます。花屋さんやスーパーの仏花コーナーに活けられているのを、見かけたことのある人も多いでしょう。この 樒 、なぜ葬儀に使われるのでしょうか。そのいわれについて解説します。

樒 は「しきみ」と読み、仏式葬儀の場で多く使われる植物です。地域によっては「しきび」などとも呼ばれます。花屋さんやスーパーの仏花コーナーに活けられているのを、見かけたことのある人も多いでしょう。この 樒 、なぜ葬儀に使われるのでしょうか。そのいわれについて解説します。

樒 はさまざまな理由から仏式葬儀で使われている

樒 はさまざまな理由から仏式葬儀で使われている

樒は、モクレン科の常緑小高木です。葉は固く、分厚く、光沢があり、一年中枯れることがありません。春には黄色の花を咲かせます。一見、なんの変哲もない常緑樹に見えますが、仏教にとっては大事な木であり、仏壇によく供えられます。

とくに樒を重視する宗派においては、花が一切使われていない樒の葉だけの「盛花」が作られ、祭壇のすぐ脇に置かれるほどです。樒が仏教にとって大事な木であるとされている理由には、次の3つがあります。

・鑑真が日本へもたらした木だから

樒は、インドから中国に渡り、鑑真が日本にもたらしたものとされています。鑑真といえば、奈良時代に唐から日本に渡り、律宗を開いた僧侶です。立派な僧侶である鑑真が持ってきた木であるため、仏教のモチーフとして扱うようになったとされています。

・仏教にゆかりのある木に似ているから

樒は「青蓮華(しょうれんげ)」に似ているとされます。青蓮華とは、仏様がいるあの世に咲いているとされている花のことです。この青蓮華に似ていることから、とくに密教系の仏教儀式では樒を使います。

・傷つけると強い香気を発するから

樒は、傷をつけると強い香気を放ちます。この香りが虫を寄せ付けず、また遺体の臭いを消してくれるため、通夜や葬儀の場に飾るのがふさわしいとされます。また、樒の葉と樹皮を粉にすることで、抹香が作られます。抹香も、葬儀や法事において必ず使われます。

・毒性があることから、清めの意味合いを持つため

樒は、葉だけでなく木、花、実と、全てに毒性があり、食べると中毒症状に陥ります。「悪しき実」から転じて「しきみ」になったという説があるほどです。樒の強い毒性は獣よけとしても有用であり、また邪(よこしま)なものを寄せ付けないというイメージから、清めの意味でも葬儀に使われます。

・丈夫で長持ちだから

樒は、枝を切っても、定期的に水を替えて活けておけばかなり長持ちします。花枯れに細心の注意を払わなければならない仏事において、ありがたい存在です。

樒 が使われるシーン

樒は、宗派により、また地方により、使われる場面が違ってきます。具体的には、次のような例があります。

・死に水を取るときに

死に水とは、臨終の際に近親者が故人の口へ水を含ませてあげることです。割り箸に水を浸した脱脂綿をはさみ、それを故人の口元へ持って行ったり、筆先を湿らせて唇を拭ったりするのが一般的ですが、樒の葉に水をのせ、故人の口元に垂らすこともあります。

・枕飾りの一環として

故人を布団に休ませた後、枕元に焼香できるところを整えるのが「枕飾り」です。枕元に経机を置き、ロウソク、線香、香炉などを置きますが、同時に樒を入れた花瓶が置かれることがあります。

・盛花の一部として

ツヤがあり、いつまでも生き生きと長持ちするため、祭壇にお供えする盛花を作るとき、グリーンの部分に樒が使われることがあります。

・ご本尊に触れるときに

創価学会では、ご本尊に触れなければならないとき、白い手袋をした上で樒の葉を一枚口にくわえます。これには、ご本尊に息がかからないようにするためと、息を清めるため、2つの意味があります。

・お墓に供える

お墓参りをするときは、花束と同様に、樒の葉ばかりの束をお供えすることがあります。

樒 と神式で使われる「榊」との違い

葬儀で使われる植物には、「榊(さかき)」もあります。榊は、主に神式の儀式で使われる植物です。慶弔問わず神式の儀式には「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」がありますが、これに使われる植物が榊です。

榊と樒は、見た目が似ていますが、榊が仏式で使われることはありませんし、樒が神式で使われることもありません。手配するときには、間違えないようにしたいものです。
榊と樒を見分けたいときは、以下のような特徴に注目してください。

・榊の特徴

葉は平べったく、薄い。左右対称に葉がついているため、枝ぶりは平面的。無臭。

・樒の特徴

葉は厚ぼったい。葉が密集して生えているため、枝ぶりが立体的。強い匂いがある。

樒 の意味を知り、供養に役立てよう

以上、樒の意味や使われ方について解説しました。「仏壇にいつも上がっている、あの植物は何?」と考えていた人の、疑問に答えることができたでしょうか。樒は、日本の仏教にとって縁の深い、歴史の長い植物です。そのいわれを十分に理解した上で、葬儀や法事に臨みましょう。

参考:『民俗小辞典 死と葬送』(吉川弘文館)

その他葬儀で使用される花について「葬儀に使われる 花 の種類をご紹介!供花、花環、枕花、献花…どう違う?」で解説していますのでこちらも合わせてご覧ください。

菅野 実

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