葬儀・終活コラム
繰り出し位牌 ってどんなもの?一般的な位牌との違いや使い方
繰り出し位牌 とは、戒名を記す木の札が複数枚納められている、厚みのある位牌のことです。「回出(くりだし)位牌」とも書きます。仏壇内が先祖の位牌でいっぱいになってしまったときなどに、複数の位牌をまとめて供養するために用いられます。 繰り出し位牌 と一般的な位牌との違いや、使い方について解説します。
【もくじ】
繰り出し位牌 とは、戒名を記す木の札が複数枚納められている、厚みのある位牌のことです。「回出(くりだし)位牌」とも書きます。仏壇内が先祖の位牌でいっぱいになってしまったときなどに、複数の位牌をまとめて供養するために用いられます。 繰り出し位牌 と一般的な位牌との違いや、使い方について解説します。
繰り出し位牌 とは複数の位牌をまとめて供養する位牌
繰り出し位牌は、一般的な位牌よりも分厚く作られています。上部が開けられるようになっており、中には10枚程度の木札が入れられています。故人の戒名や没年月日を書き込むための木札です。
供養すべき先祖が増えると、仏壇の中は位牌でいっぱいになってきます。この位牌を整理するために、繰り出し位牌が使われます。木札一枚一枚に、元からある位牌に書かれた先祖の戒名や没年月日を書き込めば、元からある位牌はもう必要ありません。繰り出し位牌を利用すれば、コンパクトに供養することが可能になるのです。
繰り出し位牌 と一般的な位牌との違い
繰り出し位牌は、一般的な個別の位牌と同じように扱うことができます。日々の供養も、一般的な位牌と同様に行って構いません。ただ、中の木札の順番には気を遣う必要があります。
中の木札は、命日順に並べます。そして、先頭の先祖の命日が過ぎれば、その木札は一番後ろに回し、次に命日を迎える先祖の木札が先頭に出るようにしておきます。そして、木札の手前には、「●●家先祖代々之霊位」などと彫られた黒塗りの札を入れます。
通常は黒塗りの札を先頭にしておきますが、法要があるときには対象となる先祖の戒名が書かれた木札を先頭に出し、まつります。
繰り出し位牌 の使い方
繰り出し位牌を購入したいと考えたときには、次のような手順で購入し、供養を始めましょう。
1.菩提寺に相談
菩提寺がある場合には、あらかじめ「位牌がたくさんあるため繰り出し位牌を購入したい」と相談しましょう。お寺の方針や地域の風習により、繰り出し位牌を購入するタイミングや種類についてアドバイスされるケースがあるためです。
個別の位牌から繰り出し位牌へ戒名を移すタイミングは、五十回忌以降とするのが一般的でした。よって、「五十回忌を迎えた先祖の位牌でなければ、繰り出し位牌に移してはいけない」とする菩提寺や地域もあるでしょう。
しかし、近年では新たに購入する仏壇が小さくなる傾向にあり、小さな仏壇では中に入る位牌の数が少ないため、繰り出し位牌を購入するタイミングも早くなってきています。事情を鑑み、柔軟に考えてくれるお寺もあります。いずれにせよ、繰り出し位牌の購入を考えたら、一度菩提寺の意見を伺うのがいいでしょう。
2.仏壇・仏具店で検討、購入
繰り出し位牌は、仏壇・仏具店のほか、インターネット通販でも購入することが可能です。ただ、大きさや種類には様々なものがあるため、どこで購入するにせよ、じっくり検討しなければなりません。
まずは大きさ。仏壇に収まるかどうかはもちろん、できればご本尊である仏像や掛け軸よりも小さなサイズを意識して選びましょう。店舗で現物を見たり、通販の商品情報でサイズをチェックしたりする必要があります。
そして種類。一般的な個別の位牌とそっくりな見た目の黒塗り位牌や、金箔が貼られた屋根のある豪華な印象のもの、流行のモダンな仏壇に合わせたシンプルなデザインのものなど、さまざまなデザインの繰り出し位牌があります。菩提寺のアドバイスを仰ぐほか、今ある仏壇の中に納めたときのバランスをイメージして種類を選びましょう。
繰り出し位牌の価格相場は、3万円から10万円程度です。高品質素材であるほど、値段が高くなります。本体価格のほか、先頭となる黒塗り札に「●●家先祖代々之霊位」と彫刻してもらうための代金が必要です。
3.名札に戒名等を書き入れる
木札への戒名等の書き入れは、菩提寺や繰り出し位牌を購入するお店に依頼することもできますし、筆ペン等により自分で行うことも可能です。基本的には、個別の位牌に刻んである戒名や没年月日、俗名、享年等をそのまま書き入れます。自分で書くときには、菩提寺のアドバイスに従って書きましょう。
4.開眼供養、閉眼供養を行う
繰り出し位牌の準備が整ったら、繰り出し位牌の開眼供養と、それまで供養してきた個別の位牌の閉眼供養が必要になります。
開眼供養とは、位牌やお墓、仏壇などを、ただのモノから供養の対象とする儀式のことです。「魂入れ」などとも称されます。一方で閉眼供養とは、それまで供養の対象であった位牌やお墓、仏壇などから魂を抜く儀式です。「魂抜き」などともいいます。
繰り出し位牌の開眼供養と、個別の位牌の閉眼供養を同時に行うことで、繰り出し位牌が新たに供養の対象となります。菩提寺に自宅まで来てもらい、仏壇の前で読経してもらうか、お寺へ位牌を持ち込んで供養をしてもらいます。
このような供養の儀式が必要なため、繰り出し位牌への移行は、法要と同時に行う家がほとんどです。繰り出し位牌の購入を考えたら、次の法要をカレンダーで確認し、その日に合わせて準備をしましょう。
5.古い位牌の処分
繰り出し位牌へ移行したら、それまで供養を行ってきた古い個別の位牌は、処分します。すでに閉眼供養を行っているため、ごみとして扱っても問題はありませんが、抵抗のある人は菩提寺や仏壇・仏具店に相談しましょう。
仏壇が手狭になったと感じたら繰り出し位牌について考えよう
位牌が増えてきた、新しく購入した仏壇が小さいなどの理由で供養が困難になったら、繰り出し位牌という選択肢について考えましょう。位牌をひとつにまとめることで仏壇周りがすっきりします。高価な買い物であり、また毎日手を合わせるものですから、選ぶときはじっくり比較検討することをおすすめします。